指導事項に基づいた学習活動を仕組む
国語の授業がもうそろそろ新しい教材に入ります。あなたは教材研究をしなければなりません。一度、自分で教材を読んでみます。そのとき、あなたは頭の中でどんなことを考えるでしょうか。多くの人がまず例外なく、「この教材、どうやって授業しようかなあ……」と考えるのではないでしょうか。実は意外かも知れませんが、この思考法、この発想法こそが、多くの教師が子どもたちの学力を向上させられない一番の要因になっています。教...
View Article連続型テキストと非連続型テキストを関連させる
まだまだ一般的には知られていませんが、いわゆる「説明的文章教材」には、三つの下位項目があります。「説明文」「記録文」「論説文」の三つです。一般には、「説明的文章教材」のすべてをまとめて「説明文」と呼ばれることが多いようですが、本来、「説明文」とは「説明的文章教材」の要素である一つの文種の呼び名に過ぎません。「文学的文章教材」が物語・小説・詩・短歌・俳句・随筆等々の文種に分かれるように、「説明的文章教...
View Article札幌市中学校教諭、車上荒らし・暴行で逮捕
【車上荒らしで教諭逮捕=強盗致傷容疑-札幌】http://news.nifty.com/cs/headline/detail/jiji-2015030700134/1.htm緊急で校長が招集されて、服務規程が確認されて、日常生活においても教育公務員としての自覚をと職員に徹底しろとか言うのだろうか。そして再発防止に努めるとか言うのだろうか。酒気帯び運転とかセクハラ発言とか、百歩譲って淫行までは「再発防...
View Article承認欲求を満たさなければならない
よく知る女の子が婚活を始めました(伝聞情報なので定かではありません。既に長い付き合いになりますが、さすがに彼女も私に「婚活始めたの」とは言いません)。四十代の女性教師です。一説によると四十代女性の婚活成功率は一%を切るという話があります。婚活ビジネスへの登録はそれなりにお金がかかると聞いていますが、成功率が一%を切るとなるとこれはもはや〈投資〉ではなく〈投機〉です。そもそも私たちは普通、成功率が一%...
View Articleコスパを考えない
若い人たちの間で「コスパ」という言葉が流行っています。コストパフォーマンスの略語ですから、要は〈費用対効果〉のことです。学校の先生も仕事ですから、〈費用対効果〉を考えることは大切なことです。何時間でもかけて、どんな重労働でも厭(いと)わず、必要なときには自腹を切って……というような仕事の仕方では長く続きません。それは確かです。しかし、「コスパ」という言葉には、自分の時間を費やし、自分の労力を費やし、...
View Article札幌市中学校教諭車上荒らし事件に寄せて
同業者の車上荒らしにたいへんなショックを受けている。なぜこんなにも自分がショックを受けているのか理解できないでいたけれど、こういうことなのではないか。車上荒らしという犯罪行為がもともと生存の危機に瀕するときに増えるタイプの犯罪であり、比較的に平和で豊かな社会では下層階級の起こすタイプの犯罪であるからだ。この手の犯罪は国が貧困にあえぎ、社会が混乱しているときに増える、そういうタイプの犯罪なのだ。事実、...
View Articleこれからの二十年は四十代にかかっている
ある介護関係の仕事に就いている友人からこんな話を聞いたことがあります。介護施設の職員があまりに老人がわがままを言うのでたしなめたところ、その老人が人格を否定するようなことを言い返してきた。そこで堪忍袋の緒が切れて殴りつけてしまったというのです。周りの職員が止めに入り、そんなことをしてはいけない、我慢しなければいけないと説得したところ、その職員がこう言ったというのです。「オレはこれを我慢しなければなら...
View Article先の見えない方を選ぶ
最近の若い人に見られるもう一つの特徴は、失敗を極度に怖れるということです。もしかしたら「そんなことないよ」という読者もいらっしゃるかもしれませんが、長年若者たちを見ていて、最近このことを特に感じます。確かに世の中は失敗に寛容ではなくなりました。学校現場にも確かにその傾向があります。管理職は保護者からのクレームを極度に怖れているところがありますからね。ひと昔前と違って、子どもを育てること以上にクレーム...
View Article新刊『教師力入門』まえがき・あとがき
まえがきみなさん、こんにちは。堀裕嗣です。札幌で中学校の国語教師なんていうヤクザな仕事をしています。そもそもがヤクザな仕事に就いているのに、私の仕事振りは更にヤクザです(笑)。そんなヤクザな教師にもそれなりの理屈があるもので、それを皆さんにご紹介したいと本書をしたためました。私の考える「教師力」は三つの要素でできているように自分では感じています。一つ目に、出世なんか考えず、組織の中心に行きたいとの志...
View Article柔らかい自我をもつ
あなたは自分のことをどんな人間だと思っているでしょうか。誠実な人でしょうか、ちゃらんぽらんな人でしょうか。暗い人でしょうか、それともノリのいい人でしょうか。そんなことひと言じゃ言えないよ……というのが本音かもしれません。みなさんは「abstract」という単語をご存知でしょうか。名詞としても形容詞としても機能する単語ですが、動詞としては「抽象する」という意味と「捨象する」という意味をもっています。つ...
View Article帰納的指導と演繹的指導を分けて考える
「言語技術教育」を標榜する実践家の授業を見ていると、授業構成の在り方に二つのタイプがあることに気づかされます。一つは、授業の冒頭である言語技術を教え、それを使って活動させるタイプ。もう一つは、まずは課題を与えて活動させてみて、どんなことに注意して活動したかを子どもたちに尋ね、そこから言語技術をまとめていくタイプ。私は前者を「演繹的な言語技術指導」、後者を「帰納的な言語技術指導」と呼んでいます。ここで...
View Articleマイクロシーベルト
ついさっき、テレビニュースで「マイクロシーベルト」という単位を聴いて、正直、「久し振りに聴いたな…」と感じた。自分では意識していなかったのだが、自分のなかでやはり風化してきているのだなと感じざるを得ない出来事だった。今朝から普段通りに働く先生方や普段通りに登校する生徒たちを眺めながらいろんなことを考えた。中学校に勤めていると、今後、震災がどのように風化していくのかを目の当たりに見る想いがする。3年生...
View Article説明・指示・発問の違いを意識する
古くから教師の指導言の王道は〈発問〉だと言われてきました。素晴らしい発問をつくることが教材研究の王道であり、素晴らしい発問さえつくれば子どもたちは必然的に思考を始めるというわけです。従って、長く発問研究の本がたくさん出されてきましたし、著名な実践家の優れた発問もずいぶんと追試されてきました。しかし、この発想は基本的に間違っています。言うまでもなく、教師の指導言には〈発問〉と〈指示〉と〈説明〉の三つが...
View Articleピン芸人を目指す
私は多くの研究団体で学んできました。三十歳の頃には国語教育だけで十七もの研究団体に所属し、毎週末にどこかしらで研究発表をしていました。私はその後、幸いにして国語教育関係の書籍を上梓できる立場になりましたが、私の国語教育に対する考え方の基礎はこの時期にでき上がったと言えます。国語教育はさまざまな論者がさまざまな主張をしています。諸派諸説が乱立する世界です。そうした毛色の異なる研究団体で毛色の異なること...
View Articleチューニング能力を高める
教職経験も長くなってきました。その間、若い教師をたくさん見てきました。その結果、一つだけこれだけは言えるな……ということがあります。それは「遊べない教師はだめだな…」ということです。「遊ぶときにはとことん遊べる教師が良い教師になるな…」と言ったほうが良いかもしれません。〈遊べる〉ということは、実は物事の楽しみ方を知っているいうことです。どんなメンバーとも、どんな場所でも、おもしろさを発見してそれを心...
View Articleはじまる…
2010年代がまた心理主義の時代であることがそろそろ鮮明になって来たように思う。00年代は社会学の10年だったし、90年代は心理学の10年だった。戦後、ほぼ10年周期で実存主義的な時代と現象学的な時代とが綱引きを繰り返している。実存主義的な時代とは基本的に「自分から見た世界観」を肯定する人たちが世論や言論界を制す時代である。現象学的な時代とは基本的に「自分から見た世界観」を括弧に括って「自分に見えて...
View Article教師冥利に尽きる遊びを想定する
私の教え子に水尻健太郎という男がいます。新採用から三年間の教え子ですから、平成十五年二月現在で三十六歳。教え子と言ってもいい大人です。実はこの水尻健太郎がすすきので小さなバーを経営しています。私はすすきのに行くたびに最後はこのバーに行って水尻とああでもないこうでもないと会話を愉しむことを常としています。朝方まで営業しているバーなので、帰宅が五時くらいになることも珍しくありません。私の教え子に長麻美と...
View Article仕事を道楽と心得る
教職を「子どもたちとの闘い」だと表現する人がいます。実践研究を「修業」だと表現するもいます。なかには「修行」と表現する人さえいます。しかし私は、教職という仕事も実践研究も、ある種の〈道楽〉だと感じています。自分は〈道楽〉で喰わせてもらっていて幸せだな、と……どこかそんな感覚を抱いています。教職の大きな特徴は、ここからが仕事、ここからが生活と分けられないところにあります。生活どころか、〈遊び〉とさえ明...
View Article張り詰めない仕事のしかた
あなたは毎日、どのくらいの力で仕事をしているだろうか。常に全力投球だろうか。それとも手を抜くところは抜いて、ほどほど主義だろうか。私は三十歳を超えた頃から全力投球で仕事をするのをやめた。全力投球は長い目で見たら、百害あって一利なしと感じたからだ。全力投球では九イニングがもたない。教師にとって九イニングとはその一年のことではない。退職までである。投球の相手は退職までに出会う数千の、校種によっては一万数...
View Article「まかせる」と「押しつける」
年齢を重ねると、もう一つ覚えなくてはならないことがある。それは仕事を下の者に「まかせる」ということだ。経験が多ければ多いほど、仕事のコツを覚えていく。一つ一つの仕事について自分なりの理想像もできてくる。自分本位に考えるなら自分でやりたい仕事もたくさん出てくる。しかし、ベテランがその仕事をすべてやってしまったのでは若者は育たない。ベテランにとっては、若者に仕事をまかせることも若者に仕事を教えることも仕...
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