まえがき
みなさん、こんにちは。堀裕嗣(ほり・ひろつぐ)と申します。日々、中学校で国語の授業なんかをしながら、夜は駄文を書き連ねる生活を続けて既に四半世紀が経ちます。国語教育と文学論を語るのが大好きで、でも文学なんてまったく流行らない時代が来てしまって、つまらないな……と感じながら二十一世紀を生きています。僕と一緒に文学を語りながら酒を呑んでくれる人もどんどん少なくなっています。特に教師にはほとんどいなくなっ...
View Article人生を貫く問題意識の効用
竹内好が1959年にこんな発言をしている。かりに教育可能論に立つとして、それでは文学教育は可能か。文学には教育的役割の一面があるし、教育には文学が要素として含まれている。そのことは、私も認める。しかし、文学と教育とは、深いつながりがあるにもかかわらず、本質的に背馳する一面があることを認めるべきではないかと思う。文学(この場合は芸術といってもいい)の本質は創造であり、創造は現在の秩序の破壊をともなう。...
View Article地域性
〈スクールカースト〉には地域性がある。これも見逃せない視点だ。基本的に〈スクールカースト〉は都市のものだ。各学級に三十数人とか四十人とかがひしめく。学年全体では数百人いる。そういう学校でこそ、〈スクールカースト〉は効力を発揮する。決して全校生徒十数人とか、小中併置の児童生徒あわせて数十人とか、そういう学校では機能しない。次章で詳しく述べるけれど、〈スクールカースト〉の決定要因は「コミュニケーション能...
View Article性的イメージとの親和性
また、東京・大阪・名古屋・札幌・福岡といった百万人から数百万人の人口を要する大都市と、数十万人規模の地方都市の間ではも、〈スクールカースト〉の顕れ方が異なる。前者のような中心都市では文字通り「コミュニケーション能力」が〈スクールカースト〉の決定要因として顕在化するけれど、後者のような郊外都市では純粋な「コミュニケーション能力」以上に、実質的な〈ヤンキー〉のカーストが高くなる。これは生徒たちの〈スクー...
View Articleリーダー生徒がいない
リーダー生徒がいない─こういう声を多く聞くようになった。多くの教師が実感的にそう語る。最もその声をよく聞くのは三月下旬、学級編制会議の場である。一般に、学級編制をするときに、各学級に男女各一名のリーダーA生徒(高いリーダー性をもち、学年リーダー或いは生徒会を担当するような学校リーダーレベル)、男女各一名のリーダーB生徒(リーダーAには及ばないが、学級をまとめる程度のリーダー性をもつレベル)の計四名を...
View Articleスクールカースト
学級集団を構成する生徒たちが、時代とともに変容してきているのは確かであろう。現代の生徒たちは、〈自己主張力〉〈共感力〉〈同調力〉の総合力としての「コミュニケーション能力」の高低を互いに評価し合いながら、自らの〈スクール・カースト〉の調整に腐心していると見て良い。〈スクール・カースト〉は別名〈学級内ステイタス〉とも呼ばれ、学級への影響力・いじめ被害者リスクを決定し、子どもたちを無意識の階級闘争へと追い...
View Article神は細部に宿る
右手の薬指の先を見つめる。薬指の二つの間接を90度に折ってみる。二つの間接を120度ずつにしてみる。右手の薬指を時計回りにまわしてみる。反時計回りにもまわしてみる。どれもこれも簡単にできる。右手の薬指に神経を集中しているからだ。でも、人間は右手の薬指に神経を集中させながら生きられない。食事をしているとき、友達と会話しているとき、車を運転しているとき、僕らの意識は右手の薬指には向かない。もしも右手の薬...
View Article出会い
人間というのは、出会うべき人とは出会うべきときに出会うものなのだなあ…とつくづく思う。藏満逸司。なんと素晴らしい男であったか。二人で飲みながら話していて、まったく退屈しない。食べ物をあんなにうまそうに食べる男を見たのも初めてだ。しかも、「うまいなあ、うまいなあ」と騒がしく食べるのではない。彼は静かに、満面にうまそうな表情を浮かべるのだ。こちらを案内して良かったな…という気持ちにさせる。もしも、彼と三...
View Articleなぜ、堀先生はそんなに本をたくさん書けるんですか?
なぜ、堀先生はそんなに本をたくさん書けるんですか?よくこう訊かれる。学級通信や雑誌原稿をよく書いている人に一般的にこういうことは訊かないだろう。「なぜ、そんなにたくさんの学級通信を書けるんですか?」とか「なぜ、そんなにたくさんの雑誌原稿を書けるんですか?」と訊く人はあまりいない。前者は日常と化してるからであり、後者は依頼が来てなんとかひねり出しているに過ぎない。僕の本も多くは日常と化しているから書け...
View Article届きました
届きました。表紙もなかなか良い色です。25年前、僕が初めて教壇に立った頃、なぜ、この国には現場教師が使えるような国語学力の体系本がないのか…と思いました。ないのだから仕方ない。いつか自分でつくろう。そう思いました。この本は25年前の僕が欲しかった本をやっと形にしたものです。著者がこういう言い方をするのは不遜ですけれど、この本は国語の授業をする立場にある教師ならば、絶対に買うべき本だと、手元に1冊置い...
View Article恩返し
やっと春の刊行ラッシュも落ち着いてひと息ついた。四十代最後の年をこれまでの実践・研究をまとめる年にできたな…という満足感がある。取り敢えず、次をどんなステップにして行くのか、じっくり考えることにしたい。大内善一先生から著書をお送りしたことへのご丁寧な返礼をいただく。さすが善一先生。僕の意図も、これからの課題も見抜いておられる。今回の著作は僕が勢いだけで駆け抜けた三十代を象徴するような内容に仕上がって...
View Article「結びつき」の強いクラスをつくる50のアイデア
教師にもふた通りの読者がいる。追試できるものを求める読者と、自分の実践をつくるために構えや考え方を欲する読者とである。前者は「こうすればこうなる」式の本を求めるし、後者はテーマ別に複数の論者を比較対照することを求める。前者はテーマ型・コンテンツ型の本からもKNOW-HOWを取り出そうとするし、後者は「こうすればこうなる」型の本からも著者の構えや思想を読み取る。前者が売れ、後者は売れない。僕はもともと...
View Article個性
僕は今年度、3年生5クラスを担当した。3学期は入試直前なので授業はすべて入試対策問題に取り組むだけということになる。国・社・数・理・英の5教科がすべてこのパターンなのだから、生徒たちにしてみれば自習をしに学校に来ているようなものだ。生徒たちはひたすら静かに問題を解く。終了10分前に模範解答が配られ自己採点する。ただそれだけだ。だからこの時期、3年生の教室はどこもとても静かだ。意外に世の中に知られてい...
View Article今月のお知らせ/2016年3月
卒業期です。公立高校入試も終わり、例年通り3月上旬は大雪に見舞われ、これからは駆け足で春がやってきます。【書籍関係】『国語科授業づくり10の原理・100の言語技術...
View Article