物語は基本的に三つの場面に分かれます。
a 冒頭部 … 物語の導入。登場人物の紹介や舞台設定の説明を主たる目的とした場面で、物語を進める〈事件性〉がない場合が多い。
b 展開部 … 物語の中心事件を描く場面。対役と大きくかかわった主人公が精神的成長を遂げる場面。
c 終末部 … 登場人物のその後の展開を描く場面で、この場面のない作品も多い。
〈冒頭部〉は『ごんぎつね』(新美南吉・小四)における語り手が茂平さんから聞いたと紹介する場面や『少年の日の思い出』(ヘルマン・ヘッセ作/高橋健二訳・中一)の第一部など、中心事件が起こる前の導入場面を言います。
〈展開部〉は物語を具体的に進める〈事件性〉のある部分であり、登場人物同士がかかわりあい、多くの場合、主人公がその中心事件を通して大きく精神的な成長を遂げます。教科書教材として採択されるような文学作品は主人公の成長物語である場合が多いので、〈展開部〉には主人公の成長(=成熟)があると言ってまず間違いありません。
〈終末部〉は中心事件を描いた〈展開部〉の後に、〈冒頭部〉に対応して後日談や語り手のその事件に対する評価が語られる場面です。教科書教材でこの〈終末部〉がないことが多く、物語の最終場面には『ごんぎつね』でも語り手の登場がありませんし、『少年の日の思い出』でも「客」と向かい合う「わたし」が再び描かれることなく物語が終わっています。