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あとがき

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企画から上梓まで十二年の歳月を要した。説明的文章・文学的文章ともに「読むこと」領域の言語技術体系を二十にまとめることに曲折した故である。「話すこと・聞くこと」「書くこと」の二領域の体系づくりは既に二○○○年には完了していた。「読むこと」領域の文学的文章の言語技術体系は一度整理し、著書にもまとめもした。しかし、文学的文章教材指導の体系はそれでは納得がいかず、ましてや説明的文章指導の体系は整理がつかないままに年齢だけを重ねた。此度、本書を上梓するに至ったことに、感無量とはこういうことを言うのだろうと、また一つ実感的な語彙を増やしたことに一人ほくそ笑んでいる。

本書の内容はこの四半世紀に出会った多くの人々の支えによるものである。中でも、宇佐美寛先生、高橋俊三先生、大内善一先生、市毛勝雄先生、渋谷孝先生、阿部昇先生、鶴田清司先生、小森茂先生、大森修先生には言語技術教育の在り方について直接教えをいただいた。ここに深く感謝申し上げたい。また、野口芳宏先生には授業づくりにおいていかなる壮大な理念も機能させないことには無いと同じであることを、腹の底から実感させていただいた。私が生意気盛りの三十代前半に野口先生と出会えた幸運に感謝したい。更には、文学的文章教材指導の言語技術体系づくりに私が迷っていた折に教えをいただき、目を見開かれることになった田中実先生、須貝千里にも深く感謝申し上げたい。両先生にはご自身の提案が言語技術教育の体系に組み込まれることにはご不満を抱かれるとは承知しておりますが、どうかお許しいただきたく存じます。

私が教職に就いたのは一九九一年のことである。以来、「研究集団ことのは」という教育実践サークルで言語技術教育の研究を続けてきた。本書が形になったのは先達に教えを受けたことによるばかりでなく、「ことのは」でともに議論し続けてきた仲間がいたからこそである。森寛・對馬義幸・市川恵幸という「研究集団ことのは」草創期をともにつくった仲間たちにまずは感謝申し上げたい。私をトゥルミンモデルと出会わせてくれた田中幹也、ワークショップ型授業と出会わせてくれた石川晋、ディベート教育と出会わせてくれた田村和幸、「研究集団ことのは」でいまなお私を支え続けてくれている山下幸、常に私の教材開発に力を貸してくれている小木恵子の諸氏にも深く感謝したい。

そして、何と言っても私の国語教育研究を基礎づけてくれた、今は亡き師匠森田茂之に感謝申し上げます。あなたへの手土産がまた一つ増えました。来世でまた酒を酌み交わすのを楽しみにしています。

国語学力はもちろん言語技術だけではありません。しかし、国語学力のなかに技術的な側面があるのは確かなことです。その技術的な側面さえ整理できなくて、どんな国語教育ができるというのだ。そんな思いを抱いて、十二年間この仕事に取り組んできました。ここに私の国語教育実践研究人生の中間まとめとして本書を提出させていただきます。

今後も国語科授業づくりの研究、実践に精進することを決意して、あとがきに代えさせていただきます。

最後になりましたが、編集の及川誠さん、杉浦美南さんには企画から出版まで大変お世話になりました。特に本書原稿が完成するまでにはずいぶんと時間をいただきお待たせしてしまいました。ここに深く深くお詫び申し上げます(でも、お二方ともよくご存知のように、ほんとはそんなこと思っちゃいませんが……笑)。

松山千春/季節の中で を聴きながら……
二○一五年○月○日 自宅書斎にて 堀  裕 嗣


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