「楽しさ」の一点突破
1.合唱コンクール指導の難しさ近年、合唱コンクールが難しい行事になってきている。かつては1年間でも有数の花形であり、生徒たちが意欲をもって取り組んでいたこの行事が、その地位から滑り落ちつつある。国民的な芸術はその時代時代によって変化する。合唱が「だれもが体験すべき芸術である」という国民的コンセンサスが得られなくなってきていることが要因だと私は考えている。子どもというものは、時代の空気を胸一杯に吸い込...
View Article1時間の形成学力を一つに絞れ!
教師は欲張りなものです。新しい教材に入るにあたって教材研究をしていると、あれもできる、これもできると、何でも詰め込もうとしてしまいます。その結果、ついつい1時間の授業に形成すべき学力がたくさんあるという授業案をつくってしまいます。子どもから見れば、あれもこれもと要求され、たいへんな1時間になってしまいます。教師の側から見ても、あれもやらなきゃこれもやらなきゃと忙しい授業になってしまいます。時間に追わ...
View Article指導事項を明確化せよ!
1時間の形成学力を一つに絞ることを提案しました。多くの読者がなるほどなと思われたとことでしょう。しかし、多くの国語科授業は形成学力を一つに絞るどころか、そもそも形成学力を教師が自覚していないというのが一般的です。「ごんぎつね」では「ごんぎつね」の鑑賞だけをし、「ありの行列」では蟻の生態をまとめるというような授業がむしろ一般的です。国語科は言語活動を通して言語能力を高める教科です。なのに多くの教師は、...
View Article指導事項を板書せよ!
皆さんは国語の授業において、その日の指導事項を板書しているでしょうか。例えば、説明文の授業において、「はじめ・なか・まとめ」の三つの意味段落に分けるとき、何段落から何段落までが「はじめ」だということは板書しノートさせても、どのようにすれば「はじめ」はここまでだと見分けられるのかを指導していないのではないでしょうか。「はじめ」とはどのような機能をもつ意味段落なのかを授業で扱ってはいないのではないでしょ...
View Article備忘徹底
学年協議会(学年の学級代表委員会)で今月の目標が決まりました。学年協議会の代表も副代表もスムーズに議事を進行してくれました。あとは書記の子に学年協議会便りを書いてもらい、それを印刷して学年全体に配付することになります。書記の子に用紙を渡して「明日の朝までに書いてきてね」と伝えます。書記の子も元気に「はい、わかりました」と応えます。ひと安心とその日の委員会を終わります。次の日の朝、いつものとおりに朝学...
View Article自分の言語生活と見比べよ!
これまで数限りない国語の授業が行われてきました。毎日毎日、国語の授業のない日はないというほどに、国語の授業が全国津々浦々で行われてきました。回数だけはどの教科よりも多く行われてきました。就学時間の2割程度は国語の授業だったのです。それなのに、なぜ、21世紀を迎えて十数年が経った現在においてさえ、国語科の指導事項の全体像が明らかにされていないのでしょうか。なぜ、国語科の授業では国語学力・言語能力が身に...
View Articleハプニングはできるだけ排除すべき?
論理的思考ほど実生活の役に立たないものはない。その証拠にだれもが論理的にものを考えようとするけれど、だれもが論理的にものを考えることができない。実生活においてだれもが論理的に考えて動くことができないのだとしたら、論理的に考えて対策を講じようとしても無駄骨に終わるだけだ。論理で動かない世の中に論理で対抗しようとしても虚しいだけである。教師は教室からできるだけハプニングを排除しようと努める。指導案通りに...
View Article演習形式を旨とせよ!
国語の授業に限りませんが、学年が上がるに従って授業が講義形式になっていく傾向があります。教科書も厚くなりますし、扱わなければならないことも多くなっていきますから、だんだんと教師が一方的にしゃべる授業が増えていくわけです。多くの子どもたちにはメモの能力があるわけではないので、教師の板書をひたすらノートに写すということになりがちです。しかも教師があまりにも多くの板書をするものですから、子どもたちは頭を使...
View Article「まだ終わらない人」と確認せよ!
授業の基本構成を演習形式にすると、どうしても意見交流や作業学習が多くなっていきます。その際、全員の交流や作業が終わってから次に進むということを徹底しなければなりません。そうでないと、中途半端に打ち切られてしまった子どもやグループがどうしても消化不良になります。作業の遅い子は常に取り残されることにもなってしまいます。何か活動を指示したときに、教師は次の子活動のことを考えているものです。教師だけが次の学...
View Article言葉のディテール
一年ほど前のことである。家の近くのコンビニに買い物に行った。レンジで温めることによって少しだけ解凍され、ちょう良い飲み頃になるというフローズン系の商品を買った。冷凍庫からその商品を出してレジへ持って行くと、アルバイトの若者がバーコードに機械をかざす。週に二度はこの店に通っているけれど、初めて見る顔だ。おそらく新人アルバイトなのだろう。ピーッと音が鳴って値段が表示される。若者が上目遣いに僕に言った。「...
View Article北川冬彦
秋壁に沿うて黄葉が一つひらひらと落ちたが──見ると白い螺旋がずうとついてゐる。仕度花は散つた。その姿はしよぼしよぼとし、なんともあはれだ。あはれなその姿の中で、美しい實を結ぶ仕度をとゝのへてゐる。ともに北川冬彦の詩である。ともに冬彦初期の作だ。僕はこの二編をよく教材化する。「秋」は詩人とは何者なのかを僕に垣間見せてくれる。壁に沿って空気の抵抗を受けながらひらひらと舞うように落ちるわくらば。これを読者...
View Article6割主義の教師論
次に書くのは「6割主義の教師論」だなと思う。10割の力を発揮して教師をやると、何か不測の事態があると余力がなくて糸が切れてしまう。10割の力を発揮して教師をやっていると、隣の教師が学級崩壊を起こしたとき、隣の教師が心の病で休職したとき、隣の教師が育児や介護で年休を取ったとき、その人達が邪魔者になってしまう。常に6割主義で仕事をしていると、いつなんどき何が起こっても、自分の余力で対応できる。みんなが6...
View Article投資と投機
費用対効果から見て高等教育はいまや「投資」ではなく「投機」に近づいている、と山田昌弘が論じている。うまいことを言うものだと膝を打った。投資として機能しているローリスクな高等教育は医学部くらいで、その他は程度の差こそあれミドルリスク、ハイリスクに向かっている……というのである。法科大学院がその最たる例として取り上げられている。おそらく自己責任論是認の風潮が国の末端にまで浸透し、もはやリスクはすべてが個...
View Article今月のお知らせ/2014年10月
『国語科授業づくり入門』堀裕嗣著・明治図書・2014年10月新刊がamazonで予約開始されました。12年振りの国語科授業の著作です。今回の本は珍しく、多くの方に読んでいただけたらいいなあ…という気持ちで、わかりやすく書きました。役立つようにも書いたつもりです。ご意見、ご感想など、お寄せいただければ幸いです。amazonへ『反語的教師論』堀裕嗣著・黎明書房・2014年7月教育エッセイ集です。少々難し...
View Article得意分野をもつ
30代は教師としてバリバリの年代です。学級担任として自分なりの手法が安定期を迎え、職員室でも大きな仕事を次々に任されるようになります。教科主任や研究主任、児童活動や生徒会活動の仕切りを任されることが増えて行きます。中学校なら、学年の生徒指導を任されたり、部活動で次々に成果を上げていく時期でもあります。さまざまなことに自信をもって取り組むことができる。それが30代です。逆に、うまくいかないことがあると...
View Article上からも、下からも…
40代は、20代、30代と比べて自分の肩にのしかかる「責任」が違うのが特徴です。研究主任や教科主任、児童活動主任や生徒会指導主任といった、研究や子どもの活動を司る役職ではなく、学年主任や生徒指導主事、教務主任といった学年や学校を司る役職へと立場が移行していきます。子どもの活動や行事の取り組みについて最終決定をしたり、教育委員会に学校を代表して報告する文書をつくったり、他の教師にクレームが来れば一緒に...
View Articleできるだけ多くの学年を経験する
できるだけ早く自分なりの「全体像」をもつには、20代のうちにすべての学年を一度は経験する。これが理想です。とは言っても、中学校教師には簡単なことなのですが、小学校教師にはかなり難しいことです。中学校なら20代のうちに卒業生を二度は出す、小学校なら低・中・高学年をできるだけバランスよくもたせてもらう。現実的にはそういうことになるでしょうか。それでも学校事情でなかなかそうはいかないこともある…というのが...
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